ホームページは落ち着いた印象なのに、採用資料は明るく、SNSでは別の色と話し方を使っている。ロゴの画像も担当者ごとに違う。このようなずれは、センスの問題というより、判断の基準と正しい素材の置き場所が共有されていないことから起こります。

ブランドガイドラインは、見た目を縛るための冊子ではありません。ホームページ、会社案内、採用資料、店頭ツール、SNSなどを作る人が「何を選び、何を避け、迷ったら誰に確認するか」を揃える運用表です。小さな会社や店舗なら、まず一枚で使える最小版をつくり、必要な項目だけ育てられます。

1. 先に、今使っているものを集める

新しいルールを書く前に、現在のホームページ、会社案内、名刺、求人票、SNS画像、看板、商品ラベルなどを並べます。それぞれに「現在も正式に使う」「確認が必要」「今後は使わない」と印を付けると、デザインを変える前に混在の原因が見えます。

  • 会社名・店舗名の正式表記と、略称を使ってよい場面
  • ロゴの元データ、色違い、縦横の種類と作成元
  • 現在使う色番号、書体、写真、イラスト
  • 会社紹介、サービス説明、採用で繰り返す言葉
  • 掲載許可や利用条件が分かる素材と、分からない素材

ファイル名が似ていても、最新版とは限りません。分からないものを推測で正式版にせず、確認担当と確認元を残します。ロゴや名称を他者が使う場合は、商標などの権利範囲も個別に確認します。

2. 最小版は、六つの欄でつくる

一枚のブランドガイドラインに入れる最小6項目
項目書くこと判断できること
目的と相手誰に、どんな会社・店として理解してほしいか表現が好みだけで決まっていないか
名前とロゴ正式表記、使うファイル、余白、最小サイズ、禁止例変形・切り抜き・古いロゴを避けられるか
色と読みやすさ色番号、背景との組み合わせ、文字に使う条件印象と読みやすさを両立できるか
写真・映像写す対象、光・距離感、避ける表現、許可の確認会社らしい素材を選べるか
言葉と語調呼び方、よく使う言葉、避ける煽り、説明の具体度媒体が変わっても同じ姿勢で話せるか
管理責任者、版番号、更新日、素材の場所、見直す条件誰が直し、どれが最新版か分かるか

ロゴについては、色、周囲の余白、最小サイズ、背景、変形や加工の禁止などを図で示すと伝わりやすくなります。経済産業省が公開するロゴ使用ガイドラインにも、色指定、余白、最小使用サイズ、禁止例が具体的に示されています。自社で必要な項目を考える参考になりますが、そのロゴ自体の使用条件とは分けてください。

3. 「ルール・素材・テンプレート」を分ける

ガイドラインのPDFだけを配っても、正しいロゴや写真が見つからなければ運用は止まります。反対に、素材だけではどこで使うかを判断できません。次の三つを別々に整え、同じ入口からたどれるようにします。

配布物を三つに分ける
種類役割例
ルール選び方と確認条件を示す色の使い分け、写真の方向性、言葉の基準
素材正式な元データを渡すロゴ、指定色、許可済み写真、アイコン
テンプレート頻繁な制作を迷わず始める会社案内、求人画像、告知、提案書のひな形

外部の制作会社や印刷会社へ渡す場合も、共有する範囲と期間を決めます。パスワードや個人情報をガイドライン本文へ書かず、必要な権限は対象と承認者を確認して別の安全な方法で共有します。

4. 色は「ブランドカラー」だけで決めない

会社らしい色でも、文字と背景の差が小さければ読みにくくなります。ロゴの色と、長い文章・ボタン・注意書きに使う色は分けて考えます。W3CのWCAGは、通常の文字に4.5:1、大きな文字に3:1以上のコントラストを基準として示し、ロゴタイプはこの文字基準の例外としています。つまり、ロゴで使える組み合わせが本文にも適するとは限りません。

ガイドラインには色番号だけでなく、「白背景の本文にはこの色」「写真の上では半透明の帯を敷く」「薄い色は装飾に限る」のように使う条件を書きます。ホームページでは実際の文字サイズと画面で確認し、色覚や明るさの違いも一つの見え方だけで判断しません。

5. 六つの業種で、使う場面を決める

業種ごとに先に揃えたい場面
業種先に揃えるもの確認すること
美容室・理容室スタイル写真、予約案内、スタッフ紹介施術写真の色味、担当名、掲載許可
美容・エステ・ネイルメニュー画像、注意事項、店内写真表現の範囲、施術前後の扱い、同意
士業相談案内、資料、プロフィール専門範囲、肩書、断定を避ける表現
飲食・小売商品写真、値札、店頭告知色味、価格・提供条件、季節商品の更新
製造製品・設備写真、図表、採用資料撮影禁止範囲、数値の確認元、版管理
建設・設備車両・現場・施工写真、安全表示現場と人物の許可、資格・対応範囲の更新

全業種に同じ写真の雰囲気を当てはめるのではなく、事業で守るべき情報と、読み手が判断したい材料を基準にします。詳しいページ設計は業種に合わせた伝え方へつなげます。

6. 架空の菓子店で、一枚にまとめる

次は作り方を説明する架空例です。実在する店舗、GRAVIの顧客・制作実績・成果ではありません。

  • 目的:手土産を選ぶ人に、素材とつくり手の落ち着いた姿勢を伝える。
  • ロゴ:正式な横組みデータを基本にし、周囲に文字一つ分の余白を残す。小さい値札では店名の文字版を使う。
  • 色:深い茶色を見出し、淡い生成色を背景に使う。価格と注意書きは読みやすい濃色にする。
  • 写真:自然光に近い明るさで、商品全体と断面を分けて撮る。過度な色補正を避ける。
  • 言葉:「最高」「絶対」ではなく、確認できる素材・製法・保存方法を説明する。
  • 管理:店主が確認し、季節商品・包装・価格が変わったときに版を更新する。

この例では、SNSの投稿をすべて同じ形に固定していません。変えてよい部分と、店名・価格・写真の扱いなど守る部分を分けています。自由な発想を残すためにも、変えない基準を少なく明確にします。

7. 公開して終わりにせず、更新のきっかけを決める

ロゴ、店舗、サービス、採用方針、撮影環境、担当者が変わったときは見直します。半年や一年という日付だけでなく、「新しい媒体を作る」「外部へ初めて素材を渡す」「古い表現が再び使われた」など、更新のきっかけを決めると運用しやすくなります。

  1. 版番号と更新日を付け、旧版を間違って使わない場所へ移す。
  2. 変更理由、変えた項目、影響する媒体を短く記録する。
  3. ホームページ、採用資料、会社案内、SNSなど反映先を確認する。
  4. 外部へ渡した素材がある場合は、差し替えの要否と連絡担当を決める。

まず、次の制作で迷った三つを持ち寄る

最初から完全なガイドラインを目指す必要はありません。今のロゴデータ、ホームページ、会社案内、採用資料、SNS画像から、「どれが正しいか迷った」「会社らしくないと感じた」「毎回説明している」ものを三つ選びます。そこから最小6項目を埋めると、必要なルールと素材が見えてきます。

GRAVIでは、ブランディング、ホームページ制作、写真・映像制作を分断せず、実際に使える言葉・写真・デザインへ整理します。現在の資料と、今後つくる媒体をご相談時にお知らせください。

参照:特許庁「商標制度の概要」、経済産業省「健康経営優良法人ロゴマーク使用ガイドライン」、W3C「Understanding Success Criterion 1.4.3: Contrast (Minimum)」(2026年10月31日確認)。個別の権利判断や法的助言は、権利者・専門家・所管機関へ確認してください。最小6項目、三分法、六業種表、架空例はGRAVIの提案です。